介護浴槽とは?耐用年数や求められる機能性についてご紹介

介護浴槽とは、寝たままや座ったままなどの姿勢で入浴が可能な、介護用の入浴設備のことです。この記事では介護浴槽の種類や耐用年数、求められる効果、そして介護浴槽と共に使うと便利な周辺機器についてご紹介していきます。

介護浴槽とは

介護浴槽とは、仰臥位入浴(ぎょうがいにゅうよく)、座位入浴、ADL入浴など、寝たままや座ったまま、あるいは可能な限り自力で入浴できるような補助的機能を持つ介護用の浴槽のことです。現在、介護浴槽は、病院や老人保健施設、サービス付き高齢者住宅などに設置されています。この記事では、介護浴槽の種類や、介護浴槽に求められる効果、耐用年数や、介護浴槽と併せて使うことで効果を発揮する周辺機器などをご紹介します。また、将来の介護の在り方についても触れていきます。

介護浴槽に求められる効果

お風呂に入ることは、介護が必要な高齢者の方々にとって、大きな意味を持ちます。生活のクオリティを高めるために、介護浴槽に求められる機能性と効果についてご紹介しましょう。

健康効果

高齢者にとって、介護浴槽で入浴することは体に刺激を受けることにほかなりません。体が温まることで新陳代謝が活発になり、体の冷えなど、血行に問題を抱えている方にとっても健康効果があります。日頃、寝たきりの方にとっては、入浴が関節や筋肉をほぐす機会になります。また、入浴は床ずれや皮膚炎など、皮膚の状態をチェックする機会にもなります。

清潔を保つ

健常者にとっても同様ですが、清潔を保つために入浴します。高齢者の場合、汗や排泄物などが体に付着していると、雑菌が繁殖することにより、健康状態を損なうことがあります。そのため、入浴により清潔を保つことは、疾病予防につながるのです。

リラックス効果

高齢者が介護浴槽で入浴する際に期待されるリラックス効果。健常者にとってお風呂が息抜きの場であるように、障害を持つ高齢者の方々にとっては、お風呂はさらに重要なリラックス、そして気分転換の場なのです。たっぷりのお湯に体を浸すことは、生きがいにもつながります。

安眠効果

リラックス効果とも関わりますが、入浴には、心や体のストレスを取り除くことで、よい眠りを促進する効果があります。特に高齢者の場合は、活動量も少ないため、運動が不足がちです。高齢者にとっては、入浴することもある意味エクササイズです。血行が促進され、心地よい汗をかくことができます。

介護浴槽の種類

介護浴槽は、大きく分けて3種類あります。寝たままで入浴が可能な「仰臥位入浴タイプ」、座ったままで入浴が可能な「座位入浴タイプ」、そして自宅での入浴に近い「ADLタイプ(個浴タイプ)」です。

仰臥位入浴タイプ

仰臥位タイプの介護浴槽は、専用のストレッチャーや担架を使うことで、寝たままの姿勢で入浴することを可能にしています。最新型の仰臥位タイプの介護浴槽は、体格が小さい介護者でも、洗髪や全身ケアまで、無理なく介助を行うことができます。また、最新型はリフト機能が付いているモデルも多く、コントロールパネルから浴槽自体を上昇させることにより、より介助のしやすさが向上します。浴槽内のお湯を自動でかき混ぜる機能や、ジェットバス、シャワーを搭載しているものもあり、介護をする人、そしてされる人の快適性が向上しています。

座位入浴タイプ

座位入浴タイプの介護浴槽は、専用の車椅子を使うことで、座ったままの姿勢で入浴することを可能にしています。最新型の座位入浴タイプの介護浴槽は、専用の車椅子を、そのまま浴槽に連結する形で高齢者を浴槽に搬送するので、ストレスがまったくありません。浴槽内からの視界も広く、ゆったりとお湯に浸かることができます。専用の車椅子は、リクライニングが可能なため、洗髪や全身洗いなど、状況に応じて角度を変えて作業することが可能。介護をする人のストレスもありません。新しいモデルの中には、ジェットバスや温度管理機能などが搭載されたものもあります。

ADLタイプ(個浴タイプ)

ADLは、Activities of Daily Livingの略称で、日本語では日常生活動作と訳されています。ADLは、排泄や食事、移動、そして入浴などの動作のことを指しますが、このADLタイプの介護浴槽は、自宅復帰や自宅でのさらなる自立を目指す高齢者や障害者の方々に適した浴槽です。基本的に、一般家庭にある浴槽と似た仕組みになっていて、またいで浴槽に入るなどの動作も利用者自身で行います。ただ、体を安定させるための背もたれや、握りやすい浴槽の縁など、安全にも万全な配慮がなされています。グループホームなどにも設置が可能なコンパクトモデルもあります。

介護浴槽の耐用年数について

介護浴槽の耐用年数は、一般的には「6年」とされています。これは、平成12年3月10日の「厚生労働省老人保健福祉局老人福祉計画課長通達・老計第8号・指定介護老人福祉施設等に係わる会計処理等の取り扱いについて」において、医療機器と同様の耐用年数が適用されることが示されました。あくまで法定耐用年数であり、実際に使用できる年数とは異なります。

介護浴槽での入浴をサポートする周辺機器

介護浴槽を使用した入浴をサポートする周辺機器も各社から販売されています。ここからは、その中でも主なものをご紹介しましょう。

電動昇降型ストレッチャー

電動昇降型のストレッチャーは、クッション性やフィット感とともに最大限の安全性が考慮され、有線式のリモートスイッチにより操作します。介護担当者にとっても、入浴する高齢者の方にとってもやさしい使用感が魅力です。

スライディングボード

スライディングボードは、ベッドからストレッチャーに移動する際など、高さ違いがある場合などに便利なツールです。さまざまな状況で使えるので、介護者にとってとても重宝するアイテムです。

浴室用手すり

浴室用の手すりは、高齢者の自立をサポートするツールと言えるでしょう。車椅子などから浴室へ移動する際のサポート、また、介護浴槽に入る際のサポートツールとして使用することができます。自宅復帰を目指す方は、脱衣時の態勢維持などに使えます。

入浴は、人間にとって、リラックス効果や安眠効果をもたらす大切な習慣です。これは年齢を重ねて、障害を抱えてしまったとしても変わりません。

将来に向けての介護の在り方と介護浴槽のまとめ

介護保険の被保険者数は、2019年5月の段階で3500万人を超えています。その中で「要介護4」「要介護5」に分類されている方々は合計で約140万人。これが現在の日本の姿なのです。

現実に高齢化社会となった日本。高齢化はこれからも進行していきますが、医療や介護の世界も変化が進むことが予想されます。施設の多様化、そしてケアサービスの形も変化しています。元気な高齢者も、健康問題を抱えていきます。人それぞれ、取り巻く環境も、症状も異なるため、個々にパーソナライズされたサービスの必要性は増していくでしょう。

介護におけるお風呂の役割が重要であるからこそ、介護浴槽を選ぶ際も、できればパーソナライズに近い、想定される利用者が求めているものを導入していくことがベストです。生活のクオリティを向上させ、心身両面に好影響を与えるお風呂。介護浴槽と、その効果や使い勝手を向上させる周辺機器を導入することで、高齢者の生活を、より充実したものにすることは、社会の役割です。